アフロ・キューバ音楽のとりこになってキューバへ

ソウル浮き立つ演奏を

喜び分かち合う指導を

 

大阪に生まれた二帆は、オペラシンガーでもあった叔母のもとで幼少期からクラシックピアノを学び、音楽に目覚める。90年代後半バンクーバーに渡り、バンクーバーコミュニティーカレッジでピアノ学と作曲を学び、音楽学の学士課程を終了。

このカレッジで出会ったのが天才パーカッショニストであり、指導者でもあるサル・フェラス。彼のラテン・ジャズのバンドに加わったことをきっかけに、ラテン音楽へのめり込んだ。繰り返すシンコペーションのリズムが二帆のソウルをクリックしたのだ。

その情熱は、二帆をラテン・ジャズの一種であるアフロ・キューバ音楽の本場キューバへと突き動かした。芸術家を支援する政府の外郭団体カナダ・カウンシルから奨学金を受け、グラミー賞受賞の世界的ピアニスト、チュチョー・バルデスの個人指導を受ける貴重な機会を得た。

ハバナのバルデスの自宅へレッスンに通った二帆。そこで思い切って自作の“queen on the road"をバルデスに披露した。サルサのリズムの型を破り、自分を表現した曲だ。それを聞いたバルデスは微笑んで言った。

「ルールを破って新しいものを作るのは素晴らしいことだ。誰に何を言われてもそのまま続けていきなさい」

この言葉はずっと心の大きな支えになっている。

雲の上の天才ピアニストにキューバで指導を受けた夢のような半年間。アフロ・キューバ音楽とつながり続けることで、この興奮はますます増幅されている。そのエネルギ—を傾けて出演したステージには、CBCラジオコンサート、バンクーバー国際ジャズフェスティバル、サルサ国際フェスティバル、パウエル・ストリート・フェスティバル、バーノン・ジャズ・クラブ、ペンダー・ハーバー・ジャズフェスティバルなどがある。

2021年カナダの音楽賞JUNO "World Music Album of the Year"にピアニストとして参加するバンド”MAZACOTE"がノミネートされる。

演奏でこみ上げる喜びをシェアしたいと、パフォーマーの仕事と平行して、ノースバンクーバーのミュージックスクールLong & McQuadeのピアノ講師も務め、サルサ、ポップミュージックのレッスンをはじめ、クラシックのピアノ試験対策まで、ジャンル、年齢を問わず、幅広いニーズに対応して指導を続けている。「自分らしく、楽しく音楽を」がモットーだ。

 文章 平野香利